2020年08月07日

身に覚えのない課金、使ったのは誰?

クレジットカードの利用明細に覚えのない8万円の請求があった。調べてみると、自分が以前使用していたスマートフォンを使って、幼稚園に通う娘がオンラインゲームで遊び、ゲーム内のアイテムを購入していたことが分かった。自宅のWi-Fi経由でインターネット回線につながり、登録してあったクレジットカード番号だけで決済できたようだ。

これは、国民生活センターの「子どもサポート情報」というメールマガジン第83号に掲載されていた情報です。このケースでは、“今は使っていないスマホだから”と油断して使わせていたことで、幼い子供が何もわからないままアイテムを購入してしまったわけなので、「しまったー!」で諦めがつくレベルだと思います。

このような保護者の不注意による高額課金トラブルの相談例は、数多く見つかります。

  • 子供が保護者のタブレットでゲームの課金をしてしまい、クレジットカードで高額が決済されていた。タブレットを自由に使わせることはなかったが、保護者の机から持ち出したようだ。タブレットにパスワードは設定しておらず、クレジットカード情報が登録されている。
  • 子供がスマートフォンでゲームをしていて、1回限りの約束で課金を許可し、親のクレジットカード番号を入力した。しかし入力情報がスマートフォンに残っていたらしく、知らない間に課金を続けていた。クレジットカード会社から限度額の連絡があり発覚した。

ネットスマホの悩みを解決「こたエール」HPより)

中には子供が故意に親のクレジットカード等を使って課金するといった事例もあります。

  • 未成年の息子がスマートフォンのオンラインゲームで親のクレジットカードを使って勝手に課金をしていた。
  • 中学生の子どもが親に黙ってスマートフォンのゲーム代を携帯電話料金と一緒に支払う方法で決済していたと分かった。
  • 小学生の子どもが自宅の現金を勝手に持ち出してプリペイド型電子マネーを購入し、オンラインゲームに課金していることが分かった。

国民生活センターHPより)

請求が数万円程度の額ならなんとか払えなくもないでしょうが、日本オンラインゲーム協会のホームページによると「クレジットカード会社から数百万円の請求がきた」という事例も確認されているなど、簡単に諦められるような問題ではありません。 様々な相談事例を見ていると、なんとなくアプリの高額課金につながりやすい、スマホの利用パターンというのが見えてきます。

アプリの高額課金につながりやすいスマホの利用パターン

  • 親名義でスマホを契約して、アカウントの支払い方法にキャリア決済やクレジットカードを登録した状態で子供専用に使わせていた。
  • 祖父母の家に遊びに来た孫に、自分が使っているスマホでゲームアプリを自由に使わせた。
  • 通信キャリアとの契約を解除した古いスマホを、そのままWi-Fiに繋いで孫が使えるようにしていた。
  • 子供に使わせることを想定していないタブレットだから画面ロックをかけないまま机の引き出しにしまっていた。

予期せぬ高額課金を防ぐための方策

こうした利用パターンを踏まえ、予期せぬ高額課金が発生することを防ぐためにあらかじめ保護者がやっておくべきことを5つ挙げていきます。

1.Apple IDやGoogleアカウントの支払方法にクレジットカードを登録しない

スマホを購入して初期設定を行う際に、Apple IDやGoogleアカウントで何かを購入するときの支払い方法を登録するステップが出てきます。多くの人はここでクレジットカードを登録するか、キャリア決済(電話料金とまとめて支払う方法)を設定していることでしょう。でもここで何も考えずに登録してしまうことが、高額課金が発生する最大の原因となります。クレジットカードは決して登録しないことが大事です。 とは言っても、Google Playでアプリを購入したり、iTunesで音楽を買ったり、LINEのスタンプを買ったりと、どうしても少額の決済が必要となる場面は少なくありません。そんなときにいちいち親がクレジットカード番号を登録して購入して、またカード番号を削除するというのは現実的ではありません。かといってキャリア決済を設定していると、知らない間に上限額いっぱいまで課金されてしまう可能性があります。

2.キャリア決済の限度額を設定する

キャリア決済とは、電話料金とまとめて後払いで支払う決済方法の総称で、通信キャリアによって呼び名は様々です。1ヶ月の上限額は、スマホの使用者の年齢が20歳以上の場合は各社10万円程度に設定されています。いずれも、支払いを拒否したり遅延したりすると電話の利用自体を止められることになり、下手をするとブラックリストに載ってしまい新たに携帯電話を契約できなくなってしまう要注意な支払い方法です。クレジットカードを登録しない代わりにキャリア決済を設定しておくなら、1か月の利用限度額を低くしておくことが重要なポイントです。

3.アプリ内課金を制限する

Androidの場合は「アプリ内課金」、iPhoneでは「App内課金」と呼びますが、いずれも内容は同じです。そもそもこれを制限しておけばアプリ内課金による高額課金のリスクはなくなるということです。

◇iPhoneのApp内課金を制限する方法
iOS11以前なら「設定」→「一般」→「機能制限」から、App内課金を制現可能です。iOS12以降なら「設定」→「スクリーンタイム」→「コンテンツとプライバシーの制限」→「iTunesおよびApp Storeでの購入」という項目から、「インストール」「App内課金」「パスワード要求」を設定可能です(図1)。これによってすべてのAppに対してApp内課金ができなくなります。 ただしこれらの制限は、親が決めたパスコードさえ分かれば変更できてしまうので、それを子供に知られないよう注意してください。

Apple: App Store での App 内課金を防ぐ
https://support.apple.com/ja-jp/HT204396

図3
図1:iPhoneのスクリーンタイムでApp内課金を制限する

◇Androidのアプリ内課金を制限する方法
Androidのアプリ内課金制限はGoogle Playストアで行います。

  1. Google Playストアを開く
  2. メニューバーから「設定」をタップ
  3. 「購入時には認証を必要とする」をタップ
  4. 「この端末でGoogle Playから購入するときは常に」をタップ
  5. Googleアカウントのパスワードを入力して「OK」をタップ

これでGoogle Playストアで課金する時にGoogleアカウントのパスワード入力が必須になります。 ただしアプリ内課金の制限はGoogleアカウントのパスワードを使って行うので、子供にGoogleアカウントを作らせると制限できなくなる点にご注意ください。

図4
図2:Androidでアプリ内課金を制限する

ただしアプリ内課金を制限すると子供の利用を大きく制限することになります。お小遣いの範囲内で少額の課金をするくらいはOKとするならば、ここでは「許可」しておき、2や4の方法で購入限度額を設けておくというやり方でもよいでしょう。

4.プリペイドカードを使う

クレジットカードやキャリア決済のような後払い(ポストペイ方式)の支払い方法と違って、あらかじめチャージした金額以上は使えないプリペイド方式なら使い過ぎの心配がないので、お子さんが使うスマホでも安心して登録することができます。 表1に、アプリや音楽、LINEスタンプの購入といった子供の利用シーンに適したプリペイドカードを挙げておきます。いずれも全国のコンビニや家電量販店などで購入可能です。

表1:子供の利用シーンに適したプリペイドカード

名称 用途
Google Playギフトカード
Google アカウントに登録することで、Google Playでのアプリ・映画&テレビ番組、音楽、電子書籍のレンタル・購入の支払いに使える。
App Store & iTunesギフトカード
Apple IDに登録することで、App StoreやiTunes Storeなどでの買い物、iCloud ストレージのアップグレード、Apple Musicなどのサブスクリプションの支払いに使える。
LINE プリペイドカード
LINE STOREでチャージしておくと「LINEクレジット」となり、スタンプや着せかえ、ゲーム内の仮想通貨、LINEマンガや占いなどの支払いに使える。

 

5.後払い決済サービスを使えないようにしておく

最近は、メールアドレスと電話番号認証だけで誰でも簡単に作れる後払い決済サービスが登場しており、注意が必要です。

バンドルカード<https://vandle.jp/>
Paidy<https://paidy.com/>

上記のサービスでは、アカウント作成に必要なのはメールアドレスと携帯電話番号だけです。バンドルカードでは未成年者の利用は保護者の同意を得ていることが条件になっているものの、子供が「保護者の同意を得ています」のボタンをクリックするだけでクリアできてしまいます。Paidyでも利用規約で「親権者の同意を取得の上お申込みください。」と書かれてあるだけで、アカウント作成時にその事実を確認するステップはありません。アカウントを作成後は、手元に現金がない状態でも一定金額をチャージして決済に利用することができて、使った分は翌月にコンビニや銀行で支払うというものです。子供でも気軽に借金ができるようなサービスだと考えれば分かりやすいでしょう。子供がこうしたサービスを使わないようにするために、あらかじめ当該アプリの利用を不許可にしておく方がよいでしょう。

第三者による不正利用の可能性もゼロではない

ほとんどの相談事例は、子供の故意または過失で課金されたものと思われますが、中には、子供が嘘をついているようには思えず、原因がよく分からないケースもあります。たとえば、あるゲームのアイテムを大量に購入したという理由で課金されたのだけど、子供はそのゲームをやったことがなく、スマホの中にそのゲームアプリも入っていないという事例です。だけどもゲーム会社やプラットフォーム事業者からは、「お子さんのスマホから間違いなく購入された記録がある。」と言われ、消費生活センターに相談しても、「子供を問い詰めると実は自分が買ったと認めることがよくありますよ。」と言われ、交渉に行き詰まっているというものです。

もし本当に子供が購入していないなら、親がそれを信じて必死で潔白を証明しようと奔走する姿はとても心強く、また嬉しいものだと思います。そんな親御さんのために、その状況でもお子さん以外がお子さんのスマホから不正購入できる可能性をお伝えしておきます。 それは、お子さんのスマホを、画面ロックを解除した状態で自由に触れる人がいたならば、たとえ数分だったとしても、その間にゲームアプリを勝手にインストールして自分のアカウントでログインし、アイテムを次々と買いまくった上でアプリをアンインストールして返すことが可能ということです。その支払いはお子さんのスマホに登録してあるクレジットカードやキャリア決済で行われることになりますし、サーバーにあるアイテム購入時の通信記録をみても、お子さんのスマホから購入したようにしか見えません。つまり、物理的にそのスマホを使える第三者の仕業という可能性があるということです。 それを確かめるには、スマホで「アプリの購入履歴」を確認してみるとよいでしょう。購入履歴はApple IDやGoogle Playから確認することができます。アンインストールされたアプリであっても購入履歴はしっかり残っているはずです。その購入日に、誰かにスマホを使わせなかったか思い出してみるとよいでしょう。 また、アイテムが追加されたゲームアカウントの登録者情報とお子さんの情報が一致しないことをゲーム運営会社に確認してもらうよう交渉してみるのも手ではないかと考えます。

最後に

今回ご紹介した対策を事前にしておけば、予期せぬ高額課金のリスクは最小に抑えることができるでしょう。また、仮にいじめっこに脅されたとしても、親が決めたパスワードを知らない限り子供には制限を変更できないので、要求を拒む大義名分にもなります。 お子さんのためにも、親のためにも、高額課金トラブルを防ぐための対策をしっかり行って、安心してスマホを使えるようにしてあげましょう。

<参考>
[消費者庁] オンラインゲームトラブル https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/internet/trouble/online.html
[一般社団法人 日本オンラインゲーム協会]子どものスマートフォン課金トラブルを防ぎましょう https://japanonlinegame.org/Campaign_Credit/
Apple から購入した App やコンテンツの返金手続きをする https://support.apple.com/ja-jp/HT204084
Google Play で払い戻しを受ける https://support.google.com/googleplay/answer/2479637?hl=ja

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