Safer Internet Day 2019

Safer Internet Day 2019 シンポジウム
 


 

 

 

 2019年2月5日は、インターネットの安全な利用環境の実現に向けて、世界中のステークホルダーによって啓発活動が行われる「Safer Internet Day(セーファーインターネットデー、以下SID)」でした。

この日は日本でも、Safer Internet Day 2019シンポジウムが開催されましたので、その様子をご報告します。

 

開催詳細

開催日時:2019年2月5日 16:00~18:00

場所:紀尾井町カンファレンス

主催:Safer Internet Day 2019 事務局

(ECPAT/ストップ子ども買春の会、公益財団法人 日本ユニセフ協会、さくらインターネット株式会社、ヤフー株式会社、一般社団法人セーファーインターネット協会)

 

開催報告

 開会にあたり、日本ユニセフ協会 早水 専務理事が、昨年のSIDの活動とその後の取組みを紹介し、児童ポルノ、リベンジポルノ、AV出演強要問題などの暴力をなくしていくためには継続性のある官民連携が重要であると挨拶しました。

 続いて、来賓挨拶として総務省 國重 総務大臣政務官が登壇し、児童ポルノ・リベンジポルノ、AV出演強要問題被害を減らしていくために、インターネットの安心安全な取組みについて国を挙げて強化していく必要があると述べ、事業者、NGOや支援機関、行政機関等の連携を深めていくことが示されました。

 

<左から日本ユニセフ協会 早水専務理事、総務省 國重 総務大臣政務官>

 

基調報告

 基調報告として、NGO、行政機関、事業者が行っている取組みや連携について報告しました。

 

まず、ECPAT/ストップ子ども買春の会 宮本共同代表が登壇し、児童買春・児童ポルノ禁止法成立から20年にあたる今、これまでの対策を振り返り、悪化する児童買春・児童ポルノ被害を減らすために、法改正を含む さらなる対策の強化が必要であると訴えました。

 東京都青少年・治安対策本部 総合対策部 鍋坂 健全育成担当課長からは、「自画撮り被害の防止に向けた条例改正」と題して、条例改正に至った背景やその内容、条例改正の結果として生じた効果や関連する啓発活動について説明しました。

 法務省 人権擁護局 大橋 調査救済課長、杉谷 調査救済課補佐官からは、人権擁護機関におけるインターネット上の人権侵犯事件の取組みについて、寄せられた相談の内容やその対応など被害者支援の取組みの紹介を行いました。

 

  <ECPAT/ストップ子ども買春の会 宮本共同代表(左上)、東京都青少年・治安対策本部 鍋坂 健全育成担当課長、(右上)

法務省 大橋 課長(左下)、法務省 杉谷 調査救済課補佐官(右下)>

 

続いて、さくらインターネット株式会社 カスタマーリレーション部 ネットセーフティ企画課 眞崎 課長が登壇し、違法情報に関する取組みや取り組む上での難しさを紹介しました。今後の対策強化のためには、幅広いステークホルダーの連携による知識の共有が効果的であること、まずは本シンポジウム参加者と連携するところから支援の輪を広げていきたいと訴えました。

 ヤフー株式会社 政策企画本部 政策企画部 仲野氏からは、児童ポルノやAV出演強要作品等の流通防止に向けた取組みを紹介しました。自社だけでは判断が難しい児童ポルノやAV出演強要作品対応について、関係団体と連携することで実現できた対策を紹介しました。

 

<左から、さくらインターネット 眞崎 マネージャー、ヤフー株式会社 仲野氏>

 

パネルディスカッション 「AV出演強要問題への対策」

 後半では、AV出演強要問題取り組む関係者6名が登壇し、「AV出演強要問題への対策」に関するパネルディスカッションを行いました。

 

▼コーディネーター、パネリスト

・パネリスト

株式会社デジタルコマース 代表取締役社長 島崎 啓之

内閣府 男女共同参画局 推進課 暴力対策推進室 室長 杉田 和暁

京都大学大学院法学研究科教授(AV人権倫理機構顧問) 曽我部 真裕

NPO法人人身取引被害者サポートセンターライトハウス 創設者・理事 藤原 志帆子

自由民主党アダルトビデオ出演強要問題を考えるPT事務局長 衆議院議員 宮﨑 政久

・コーディネーター

一般社団法人セーファーインターネット協会(以下「SIA」) 違法有害情報対策部長 山下 優子

(敬称略)

 

 


<ライトハウス 藤原氏(左上)、内閣府 杉田氏(右上)、

AV人権倫理機構 曽我部氏(左中)、デジタルコマース 島崎氏(右中) 

自由民主党宮﨑氏(左下)、SIA 山下氏(右下)>

 

はじめに、コーディネーターを務める山下氏から、前提の整理として、AV出演強要問題に関しては、時系列に沿って、①制作段階、②一次流通(正式な販売ルートによる市場流通)、③二次流通(中古市場や違法アップロード等、一次流通以外の流通)の3段階に大きく分類することができるという視点が共有されました。そのうえで、それぞれの段階において対応が必要であり、特に①制作段階においていわゆる「出演強要作品」が制作されないような対応がとられることがもっとも重要であると理解しているが、本シンポジウムがより安心安全なインターネット環境の実現を目指す趣旨で開催されていることから、特にインターネット上の流通(②一次流通・③二次流通いずれも含む)に比重を置いた議論となると予想されることについて、前置きがされました。

 

これに続き、パネリストから自己紹介、この問題に関する取組みや問題意識等について報告がありました。

 藤原氏は、AV出演強要問題に関する相談が増加傾向にあることや相談者の傾向、相談内容について報告があり、被害者支援が不十分である現状を訴えました。

 杉田氏は、政府の取組みの状況について説明し、AV出演強要問題の被害者支援については関係省庁を横断した取組みが必要であり、各省が一丸となって取り組んでいる旨紹介しました。

 曽我部氏からは、有識者の観点から、同機構における出演強要問題に対する取組みや業界健全化に向けた取組みについて紹介するとともに、この問題に関する問題意識を示しました。

 島崎氏は、AV出演強要問題が起こる業界構造の問題を指摘のうえ、同社の運営体制として、出演強要を含む人権を侵害する態様で制作された作品はもちろん、児童ポルノを想像させる作品の取扱いを禁止するなど、牽引役を担う事業者としての取組みを紹介しました。

 山下氏からは、SIAが運営するホットライン事業においてはAV出演強要作品がガイドラインの対象とはなっていないため、児童ポルノやわいせつ画像に該当する場合であれば削除依頼の対象となるが、それ以外の場合には対応が難しいという現状の報告と、ライトハウスおよびSIA会員社との間で開始した出演強要等AV作品の流通防止のための取組みについての紹介がありました。

 最後に宮﨑氏は、同PTの活動について紹介し、立法を含めた被害者救済のための手段を積極的に検討する意欲を示すとともに、現実的な問題としてこの問題に関しては関係省庁が多く調整に難しさが伴うという問題点が指摘されました。

 

 

 ディスカッションでは、まず、藤原氏から「強要について立証が難しいことは多々あるが、AV業界の対策も進み、対応してくれる業者が増えてきた印象を持っている。その一方、スマートフォンが1台あれば、簡単に作品の制作からアップロードまで出来る時代になっており、個人でゲリラ的に運営している事業者も出てきている。こういった業者への対応には苦慮している。」と被害者支援の現場からの問題提起がありました。

 続いて、島崎氏からの、作品が違法アップロードされていた場合に著作権に基づく削除依頼を行うという報告に関連して、著作権を有さないことの多い出演者本人が削除を希望する場合にとり得る方法について議論が移りました。曽我部教授からは、①法律に基づく請求と、②AV人権倫理機構の「販売停止スキーム」という2つのアプローチについて説明がありました。①法律に基づく請求としては、(i)メーカー等の著作権者の協力を得られる場合には「著作権侵害」に基づく請求が可能であり、(ii)著作権者の協力を得られない場合には「肖像権」・「プライバシー権」の侵害であると主張する方法も考えられるが、これらの主張を行うためには本人の負担が重い」と指摘しました。

 宮﨑氏からは、AV出演強要問題に特有の論点について指摘がありました。すなわち、この問題の難しさは、様々な社会現象が絡み合っているところにあるため、的を絞った議論が必要である点にある。この問題を検討する際に考慮すべき権利をとってみても、表現の自由や営業の自由、さらには職業選択の自由等、多様な権利が関わってくるが、これらの権利に配慮しつつ、いかに公共の利益との調整を図るべきかを見極めた対策が必要であると語りました。また、性に関わることは通常秘め事と位置づけられるものであり、AV作品にかかる表現の自由を検討するにあたっては、その表現内容の性質から自ずと制約を受けるところがあるという風に考えているという指摘がありました。

 さらに、法整備に関しても、曽我部氏から、法的にグレーな位置づけであるAVについて、どのように捉えていくのかという課題も残されているという指摘がありました。すなわち、適切かつ実効的な法整備を行うためにはAV業界も巻き込んだ議論が必要不可欠であるにもかかわらず、AV業界が現状としてはグレーな業界と位置づけられるため、政府または行政としては、AV業界と正面から連携することには難しさがあると推測される。そのため、まずはこの状況を解決する方法の検討、具体的にはわいせつ物頒布等罪を規定する刑法175条の改正も必要であろうと指摘しました。

 島崎氏は「業界の健全化に向けて、本日の議論の重要なものとなった。今後もこの問題には継続して取り組んでいく」、杉田氏は「一筋縄で解決する問題ではないが、政府として取り組んでいく」とそれぞれ語り、事業者および行政機関のそれぞれの立場から本問題の解決にむけての意欲が示されました。

最後に、山下氏から、引き続き関係者において議論を継続していきたい旨の発言があり、パネルディスカッションは終了しました。

 

 

閉会

 本シンポジウムの最後には、セーファーインターネット協会 別所会長が閉会挨拶に立ち、「児童ポルノやリベンジポルノ、AV出演強要の取組みについて、官民様々な取組みが実施、進展されていることが共有された一方で、多くの課題が残っていることも示されました。各取組みは進化させていくと同時に、法整備の検討もさらに進めていかなければいけない事が示唆されました。本来の被害防止のためには犯罪を防ぐことが重要で法整備はそれにつながること。より多くの方にこの問題の関心を持ってもらい、引き続き取り組んでいく必要がある」と、今後に向けての意気込みを語り、シンポジウムは幕を閉じました。

 

 閉会後の懇親会には多くの参加者が参加し、個別に挨拶や意見交換を続けるなど交流を深め合いました。

 今後も、児童ポルノやリベンジポルノなどのインターネット上の違法・有害情報対策をはじめ、インターネット上の諸課題への対策を業界横断の取組みによって進めていけるよう、連携を深めていきます。

 

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日時

2019年2月5日 16:00~18:00

 

場所

紀尾井町カンファレンス

 

主催

Safer Internet Day 2019 事務局

(ECPAT/ストップ子ども買春の会、公益財団法人 日本ユニセフ協会、さくらインターネット株式会社、ヤフー株式会社、一般社団法人セーファーインターネット協会)

 

参加者

インターネットの安全な利用環境の実現等に取り組む事業者、相談機関、省庁関係者

 

プログラム

1.開会のご挨拶 日本ユニセフ協会 専務理事 早水 研

2.来賓のご挨拶 総務大臣政務官 國重 徹

3.基調報告

  ①ECPAT/ストップ子ども買春の会 共同代表 宮本 潤子

  ②東京都青少年・治安対策本部  総合対策部 健全育成担当課長  鍋坂 昌洋

  ③法務省 人権擁護局 調査救済課長 大橋 光典

                調査救済課補佐官 杉谷 達哉

  ④さくらインターネット株式会社 カスタマーリレーション部 ネットセーフティ企画課長 眞崎 さゆり

  ⑤ヤフー株式会社 政策企画本部 政策企画部 仲野 亘

4.パネルディスカッション 「AV出演強要問題への対策」

  ①株式会社デジタルコマース 代表取締役社長 島崎 啓之

  ②内閣府 男女共同参画局 推進課 暴力対策推進室 室長 杉田 和暁

  ③京都大学大学院法学研究科教授(AV人権倫理機構顧問) 曽我部 真裕

  ④NPO法人人身取引被害者サポートセンターライトハウス創設者・理事 藤原 志帆子

  ⑤自由民主党アダルトビデオ出演強要問題を考えるPT事務局長 衆議院議員 宮﨑 政久

  ⑥一般社団法人セーファーインターネット協会 違法有害情報対策部長(コーディネーター) 山下 優子

5.閉会のご挨拶 一般社団法人セーファーインターネット協会 会長 別所 直哉

 

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